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更新日:2017年9月20日

第10回 相互乗り入れ授業ってなんですか? ~白井学園長に聞く~

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12月に行われた「学園評価アンケート」の結果から、乗り入れ授業や小・中一貫の目的や効果が不明(重要だと感じられない)という声が多いことが明らかになりました。学園の教育を実現するための取り組みの中で重要な柱の一つとされているにもかかわらず、保護者や地域がそう感じていないのはなぜでしょう?
  • 「相互乗り入れ授業」が行われていることを知らない。
  • 「相互乗り入れ授業」どうやって行われているのかわからない。

それが大きな原因かもしれません。
なぜ、学園は乗り入れ授業を重要と考えているのか、それは本当に子供たちの学力向上にとって必要性なものなのか、それを知る鍵を白井学園長のところへ探しに行ってきました。

おっと、そのまえに。
今回も留守番役のたかみなみ先生!用語の解説をお願いします。

たかみなみ先生
はい、おまかせ下さい。今回の大事な用語はこれですね。

中一ギャップ 小学校から中学校に進学したときに、学習内容や生活リズムの変化になじむことができずに、いじめが増加したり不登校になったりする現象のことを言います。小学校までに築いた人間関係が失われる、学習の質と量がかわるなどの要因が考えられています。
チームティーチング いくつかの方法がありますが、鷹南学園では、小学校では少人数クラスで、中学校では通常クラスで、学級担当の教師が進める授業に、その教師とチームを組む他の教師が助力しつつ行う方法を取り入れています。中心となって授業を進める先生をT1(ティーワン)、個々の生徒をフォローしたり、ワークシートのチェックをしたりする先生をT2(ティーツー)とよんでいます。
中学校プレ講座
(ちゅうがっこうプレこうざ)
鷹南学園の小学6年生が、一斉に中学校で体験授業を受ける試みです。中学校の先生の専門性を活かした授業を受けてみることで、中学進学への期待や意欲を高めることを目的としています。平成24年度までは、「チャレンジ学習」として夏休みに希望者を対象に行っていましたが、今後は、全員を対象にした正規の授業として公開授業のある日などに取り入れていこうと考えています。また、部活動体験も全員を対象に取り入れていきます。
後補充
(あとほじゅう)
小学校のA先生が中学校へ乗り入れ授業に行くとき、後に残って小学校の授業を行うのが「後補充の先生」です。中学校の先生が小学校へ行くときも同様です。
相互乗り入れ授業
(そうごのりいれじゅぎょう)
小-小、小-中で教員が行き来する相互乗り入れ授業は、三鷹市内全学園で行われています。ただし、その具体的な方法は学園によって様々です。詳しくは本文で。

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Q:「相互乗り入れ授業」の目的は何ですか?なぜ、「相互乗り入れ授業」が必要なのですか?

わたしたちは、義務教育9年間を3つのブロックに分けて考えています。

小学1年生から4年生、5年生から中学1年生、そして中学2,3年生です。この中で第2期にあたる小5から中1を、「円滑期」、小-中を繋いでいく時期と考えています。
小・中一貫教育の狙いの一つに、「中一ギャップの解消」がありますが、その対策のひとつとして「相互乗り入れ教育」が取り入れられています。

たとえば、中学1年生の数学で学力定着を図るために、小・中一貫教育ではどんなことができるか考えてみましょう。

ひとつには、小学校の時に親しんだ担任や算数の先生がT2として授業にかかわることで、子どもたちが「安心できる」という心理的効果です。
つぎに、小学校で行われている丁寧な授業のノウハウが活かされることですね。
そして、小学生の時の学力等の実態を良く把握した人が授業に係わることで、個に応じたフォローができるという具体的効果が上げられます。

今、中原小と東台小の算数の授業では習熟度別授業がとりいれられています。学年が上がるにつれて、授業の理解度に個人差が出てくるので、理解度によってクラスを分けていくことで、段階に応じた重点的な指導をすることが目的です。

一方、五中では少人数制クラスも、習熟度別授業も行われていません。
これは、思春期の子どもたちの発達の過程を見わたした結果、習熟度別クラスにしてしまうことで、学習意欲が低下してしまう可能性が強いからです。逆の効果を生む可能性があるんですね。
そのかわり、先生が一つの授業に複数係わるチームティーチングで授業の中でピンポイント的に個に応じた指導ができるようにしているのです。

24年度は先生2人体制で授業を行ってきましたが、これからは、カリキュラムや時間割の工夫で、中学校1クラスの授業に対し、中学校の先生をT1に、講師の先生1名と小学校の先生1名をT2に。つまり、1回の授業を3人の先生で見られるようにしていきたいと考えています。
今は1時間の乗り入れ授業のために、前後の移動や授業前後の情報交換に1時間かかっているのですが、例えばこれを半日乗り入れにすると、授業3時間、移動と連絡に1時間。時間を有効に使えるようになるんですね。

T2のあり方も変えていきたいと思っています。
今は中学校の数学の先生が、小学校の基礎のクラスのT2を担当していますが、その専門性を活かして小学校の先生の指導技術の向上を図ることができるよう、小学校の上級クラスの指導をしてもらうのも効果的です。

数学だけでなく、図工、体育、理科といった実技教科で、専門的な指導のコツ、ポイントを共有することができればよいと思います。こうした授業では、単元によってはメインになる教員が交代することも考えられます。
とくに、中学校では現在、美術や技術の授業の時間数が他の教科に比べて少ないので、こうした「授業でふさがっていない」時間を乗り入れ授業に活用し、より多くの先生方が多方面で相互乗り入れ授業に係わるようにしていきたいです。

専門性を活かしたい理科や音楽は、今のところ授業時数の関係で乗り入れ授業を行うのは難しいけれど、中学校プレ講座などで対応していきたいですね。

これは、他学園での例ですが、中2になって乗り入れ授業を行っても効果がないんですよ。「今更小学校の先生なんて」となって、かえって逆効果になることもありました。でも、中1なら効果がある。だから中1の時に「学力の基礎固め」をするのが有効です。
 

Q:相互乗り入れ授業の実施にあたっての課題は?

最大の問題は、「後補充」です。

小学校は一人の先生がほとんど全教科をみているので、小学校には一人の後補充の先生がいればいいということになります。ところが中学校は教科担任制なので、乗り入れ授業の教科数が増えると、その教科数だけ後補充の先生が必要になります。

もちろん、指導力のある「後補充の先生」が手配できることも重要です。
市、都の双方から後補充講師が派遣される仕組みで、常に三鷹市の校長会を通じて指導力の保証された講師の派遣を要求していますが、それだけでは間に合わない。
やはり「先生を育てる」ことが必要です。

      ― 先生を育てる、といいますが、それにはなにが必要ですか?

中堅教員の力、管理職の力、そして、地域・保護者の力が必要です。
着任した先生をいろんなかたちで支えてほしい。育てていって欲しいと願っています。「厳しいけれど温かい」助言も必要です。俗に言うモンスターペアレンツと「辛口の友人」の違いは、じぶんの子供のことだけを見ているか、児童・生徒全体のことや先生のことを見て発言しているかという点にありますね。

     ― とはいっても、先生が育つのには時間がかかりますね。

いや、その気になれば1年・・・半年で先生は変わりますよ。どんどん変わっていく。


Q:相互乗り入れ授業を実現するための研修や準備の時間はどうやって確保しているのですか?

後補充がつく時間を活用しています。実際に授業に当たる時間のほかに、勉強会や担当者同士の情報交換を行って、学習状況の共有、指導観の共有を図っています。
 

Q:後補充の問題や、準備やフォローアップにかかる時間の確保など、乗り越えなければならない課題も多い「相互乗り入れ授業」です。 厳しい見方をすれば、「それほどまでして必要なの?」と疑問です。
 子供たちにとって利があることは先ほどお聞きしましたが、先生にとってどんなメリットがありますか?

現場を肌で感じるのは大きいです。
中学校の先生方が小学校に来ると「様子を実感する」ことができる。「小学校の先生ってこんな風に一日中子供と係わっているんだ」と。
その逆もありますね。小学校の先生が中学校の教科担任制の授業を見て「こんなふうに指導しているんだ、こんなふうに生徒は授業を受けているんだ。」と感じる。時には「思春期の子どもたち、エネルギーの有り余っている子どもたち」を感じることもある。

互いの状況を肌で感じると、教員相互の理解が深まっていきますね。

Q:「相互乗り入れ授業」の成果はどのように検証されるのでしょう?

2009年の秋に学園が開園しました。今年の中3が小6の時に一貫教育が始まったんです。彼らが最初の「小・中一貫教育校卒」です。でも、小学校の時からずっと一貫教育で育ってきたわけではないから、次の学年、さらに次の学年にどのような効果が現れていくかを検証していかなければならないですね。

ただ、交流活動などを続けてきたこと、たとえば、先日中3が小学校へボランティア活動に来たのですが、彼らが中学校にいるとき見せる顔と、小学生に見せる顔は本当に違う。数値で表すことはできませんが、小中の交流は評価されていいです。
 

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Q:小・小での乗り入れにはどんな効果が有りますか?

学園になったとはいえ、各校それぞれに特色があります。それは良さでもあるけれど、授業の指導観の統一を図っていくことが、中学校へ向けての準備には重要です。

『学校だより』だけでなく、『学年だより』の交換も始めようと思っています。
中原小学校の5年1組、2組。東台小学校の1組、2組。でなく、鷹南学園の5年1組、2組、3組、4組になる。それが狙いですね。

小学校間では、互いにいろんな先生が乗り入れ授業に出向いたり受け入れたりしています。これを、音楽は音楽同士、4年生担任は4年生同士、のように乗り入れいていくようにしたい。
子供たちにとっては、いろんな先生に会えるのも、刺激があっていいですよ。「知っている顔が増える=お互いの敷居を下げる」ですから。


Q:小-小の乗り入れ授業を見ていて「先生方が互いに遠慮がち」と感じますが。

そこは、確かに課題です。もっと踏み込んでいい。いろんな意見を交わしていい。

丸一日の乗り入れもやってみたいです。
中学校の先生が丸一日小学校にいる・・・きっと一日終わるとへろへろですよ。休み時間も子供たちの遊び相手をして校庭を駆け回る中学校の先生・・・。職員室の雰囲気の違いを肌で感じることもいい。
自分は前任の学園で、一日校長交代を実施したことがあります。面白かったですよ。3校とも全然違うんです。その違いが分かっただけでも価値がある。

     - 「どちらの学校がいい」とか「正しい」ということではなく、お互いの違いがわかれば自分を変えるチャンスもでてくるということですね。


Q:最後にお尋ねします。どんな学園生になって卒業していって欲しいですか?

「自立できる子」ですね。
たとえば、今の中原小の子は「砂」。担任によって型に納められている。だから型が外れると、流されちゃったり、崩れちゃったり。それを、自分で形を作っていられる「粘土」にしたい。「自分で考えること、考えを言えること、流されないこと」を大切にしたい。

     - 中原小にかぎりませんね。東台小でも五中でも、課題は同じですね。

子供たちの9年間に対し、学園全体で責任を全うすることが必要なんです。
 

Q:保護者や地域はなにをすればいいでしょう?

子育ては、学校と家庭と地域の3本の矢でおこなうものです。
お互いにできることが違う。いろんな方面から子供たちを育てていただきたい。

特に、ご家庭ではしつけと安らぎを(時には発散も)お願いしたい。
また、学校や学園に対してご意見があるときは、ぜひ、直接学校、学園に伝えていただきたいです。辛口な意見でもいいんです。それはクレームではなく「貴重なご意見」です。昔はよく、「子供を人質に取られてなにも言えない」といわれましたが、今は違います。
また、地域に対しては、是非これまで通りの「声掛け・見守り」をお願いしたいです。

- 私たち地域、保護者は、私たちのできること、すべきことを。学校は学校のすべきことを。それぞれが責任を果たしていくことが総合的に子供たちを育てていくのですね。年度末の貴重なお時間を、ありがとうございました。

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